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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2444号 判決 1984年4月25日

控訴人

有限会社グッパー

右代表者

矢野三千男

被控訴人

日本弁護士連合会

右代表者会長

石井成一

右訴訟代理人

後藤明史

五百蔵洋一

被控訴人

右代表者法務大臣

住栄作

右指定代理人

平賀俊明

外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人らは控訴人に対し、各自金三〇〇万円及びこれに対する昭和五六年六月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴人らは、いずれも控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、原判決八枚目裏八行目を左記のとおり改めるほかは原判決事実摘示及び当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

1  被控訴人らの主張は失当であり、すべて争う。

2  弁護士会自治も弁護士の独善を認めるものではなく、弁護士の自治的懲戒制度もその公正な手続を担保することが要請される。そして、弁護士懲戒申立権、異議申立権自体は被害者救済を目的として認められたものではなく、公益的性格のものであることはもとよりであるが、その公益性を理由として被控訴人日本弁護士連合会がどんなに違法、不当な審理手続で不当な判断をしても、異議申出人に対する不法行為が成立しないというのは相当ではなく、その手続及び判断の公正を担保し、弁護士自治が真に民意を反映した健全な姿を保つためにも、不法行為の成立を認めるべきである。弁護士会が適正に懲戒権を行使することは国民に対する義務であり、異議申出人は適正な懲戒権の行使に関して法律上保護されるべき利益を有するというべきである。

理由

一当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく棄却すべきであると判断するものであるが、その理由は原判決一〇枚目裏一〇行目末尾に「弁護士自治が独善に陥らないよういましめられるべきであり、かつ、民意を反映した健全なものであるべきであるとの控訴人の主張が正当であるとしても、そのことから直ちに弁護士会が異議申出人に対し適正に弁護士懲戒権を行使するべき法的義務を負つており、異議申出人がこの行使に関して法律上保護されるべき利益を有しているということはできない。したがつて、控訴人の主張する被控訴人日本弁護士連合会の行為が控訴人に対する不法行為を構成すると解する余地はなく、また、被控訴人国がこれに関して控訴人に賠償責任を負うと解する余地もない。」を加えるほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

二よつて、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(森綱郎 片岡安夫 小林克巳)

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